　『蟷螂ひとたり』　

　
蟷螂
ひとたり
石の上
腕を振り上げ
身体を揺らす
　
蟷螂
ひとたり
石の上
小さな目には
どんな世界が
映り棲む
　
　
蟷螂
ひとたり
石の上
風に乗り
音に乗り
舞い踊る
　
蟷螂
ひとたり
石の上
臨んでいるのは
舞台
はたまた
観客か
　
　
蟷螂よ
まだ幼き
蟷螂よ
残念ながら
おまえが今いる世界は
我々にとっては
ただの砂利道
　
蟷螂よ
かくも幼き
蟷螂よ
間違って踏み潰される前に
草むらに
一刻の涼を求めるも
また一興かと
　
　
蟷螂
ひとたり
石の上
雲ひとつ無い
青の下
　
蟷螂
ひとたり
石の上
腕を振り上げ
身体を揺らす
　
　
蟷螂
ひとたり
石の上
　
たった
ひとたり
石の上
光に溺れ
何を見る
　
　
蟷螂
ひとたり
時の上
今に溺れ
ただ止まる
　
　
蟷螂
ひとたり
時の外
　
　
　
蟷螂
ひとつ
今は去る
　