ウォーレスの海の家

− 青いポリ −




「ぬぉっ。おまえさん、気が付いておったかいの」
「どうしたんだね」
「ワシ等が、重大ニュースを選定してる間に、
今年のヤツは消え去りおったぞ」
「なにをいまさら、いつものことじゃないか」
「いつものことじゃと。ふむ。そう言えばそんな気もしなくはないが・・・」
「もう、飲み過ぎなんじゃないか」
「なんじゃと、ワシはまだ今年になってからホンの一口程度しか・・・」
「あんたは、去年から飲み続けてるんだよ・・・」
「おいおい、去年のことを言うとワシが笑うぞ」
「どうぞ、お好きなように」
 
「むむ、おまえさん、家出中なにがあったんじゃ」
「ふと、自分を振り返ってみただけだよ」
「おお、そうじゃった、家出中じゃなくて迷子中だったっけ」
「そしたら、気が付いたのさ」
「あんときゃ、尻に火がついたような勢いだったっけ」
「毎日があまりにも同じことの繰り返しばかりでね」
「そういえば、前にもそんなヤツ見たことあったの」
「惰性で行くのは楽だけど・・・。物足りないんだよ」
「そん時のヤツも必死に何か探しておったの」
「人間てのは、いつも何かを求めてる生き物なんだよ」
「やっこさんたら、跳ねるのに忙しくて、
目の前の水にさえ気が付かなかったな」
「青い鳥の例えだな」
「そうじゃ、そん時は確か青いポリのバケツじゃったっけ。
でも、気が付いたとしても、ヤツのケツとバケツじゃ、
器に差がありすぎだったっけ」
「そうだな言われてみれば、結局は人間の器の問題なんだよなぁ。
オレももう少し、寛大にならないとな・・・」
「いや、ヤツの場合、缶が大じゃなくて、ケツの方が大きかったんじゃよ」
 
「おい、大丈夫か?なんか震えておるようじゃが・・・」
「今年こそは、寛大に、寛容に・・・」
「いやいや、アレはどう見ても缶じゃなくてポリじゃったぞ」
「押さえて、押さえて・・・」
「そうじゃ、押さえ込もうとしたんじゃがの、収まりきらなかったんじゃよ」
「・・・」
「結局は、頭からザバッといったんじゃ」
「冷静に、冷静に・・・」
「まさしくその通りじゃ、慌てふためいて走り回るよりも、
まずは頭を冷やさんとな。 それが一番じゃて」
 
「なぁ、じいさん。今年最初で最後の願いを・・・」
「ふぉっ、ふぉ。やっとその言葉を吐きおったか」
「えっ」
「実はその言葉を待っておったんじゃ。何、気を悪くするなよ。
ちょっと、からかっておっただけじゃて・・・」
「ほんとか」
「昨日、今日の付き合いじゃなかろうに・・・。言わずともわかっておるぞ」
「おお、じいさん!!」
「心配はいらん、ワシの力で、おまえさんのことを重大ニュースのトップに」
「・・・ ・・・」
「おい、どうしたんじゃ。新年早々フェードアウトか」
「・・・ ・・・ ・・・」
「やれやれ、今年も大変なことになりそうじゃの。
はてさて、なんか前にもこんなことが・・・
まっ、とりあえず鍵だけは預かっておくかの・・・」

 
 
 
1,Jan,2002


 

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