彼方へ、そして・・・ 
断続寓(愚)話 『 彼方へ、そして・・・ 』 その九


 

   その九  詮無きこと
 
 
 こりゃいいぞ見て御覧よ、そうなんだ。
 おまえの輝き体に浴びて。
 うっすら明るく光ってる。
 ぐるぐる回る、そうなんだ。
 くるくる回る、そりゃなんだ。
 光と影が踊ってる。
 
 つぶやき無くした、こりゃいいぞ。
 もっといい物手に入れた。
 これなら遠くで見ていても、
 おまえの言うことよくわかる。
 つぶやき届かぬ所でも、
 おまえの言うことよくわかる。
 
 みんなが夢中、こりゃいいぞ。
 それを見ている、詮方ちゃん。
 詮ちゃん、こっそり輪を抜ける。
 全く気付かぬ、そうなんだ。
 こりゃいいぞを回ってる。
 詮ちゃん、こっそり輪を抜けた。
 気付いていたのか、そりゃなんだ。
 横目で詮ちゃん、眺めつつ。
 くるくるぐるり、くるぐるり。
 
 ぐるぐる回る、そうなんだ。
 その真ん中に、こりゃいいぞ。
 踊り続ける、そりゃなんだ。
 語り続ける、こりゃいいぞ。
 音無き会話が始まって。
 意味無き対話が始まった。
 
 
 遙か彼方のその彼方。
 それを見ていたとにかくは。
 自分も真似して輝き増した。
 けれど遠くのとにかくは、そうなんだを持ってない。
 
 遠くで、とにかく瞬いて。
 輝き答える者がない。
 輝き伝える者がない。
 明るくなったり、がっかりしたり。
 遠くの方で、輝き増して。
 遠くの方で、輝き消して。
 遠くで、とにかく瞬いて。
 とにかく、何かを主張する。
 
 
 すべてを見届け、詮方ちゃん。
 かなり満足、詮方ちゃん。
 詮ちゃん、何を思ったか。
 小首を傾げて、思い出す。
 詮ちゃん、突如飛び出した。
 辺りを全く省みず。
 辺りをちょっと顧みて。
 
 目指すは、さっきのあの彼方。
 自分が捕らえたその時に。
 何かが弾けたその向きに。
 
 
 詮方ないと思いつつ。
 
 
 詮無き事とはこの事か。
 


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風鏡譚 −ふうきょうたん−
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