柔らかき春の午後



柔らかき春の午後
散り泥 なず む花
不意の強き風に
霞は流れ雲は千切れ消えゆ
 
 
ひよどり の留まりし枝は
重きに撓 しな い花を舞わせ
何事か思い立ちて飛び去りたる後には
より一層の花を打ち踊らす

 
 
やがて舞い飽きた花共は
おう の川面 かわも に集い
群れを成して何処 いずこへと去り行く

 
 
 
ふと迷い込んだ見知らぬ路の入り口
揺曳 ようえい する春の時を粧 よそお いつも
歩を進めるを敵 かな わずただ佇 たたず むのみ
 
 
乾きたる者よ
哀れなる心よ
川が空と溶け合うまでも続く花の隧道 ずいどう の果てにも
静謐 せいひつ を楽の音とした果てを見せぬ歌舞 かぶ の彼方にも
願うものの無き事を知りたる者よ
何故にここに佇み何を求む

 
 
陽はやがて傾き始め
名も知らぬ鳥の呻吟 さまよ うを聞き
その心流離 さすら うを知る
いつしか杳 よう として時過ぎたること覚える
 
 
柔らかき春の日
行き泥む時
散り泥む花
心は何処へ去りぬ

 
 
 
 
 
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