雲を割り半分の月 天頂差して緩 ゆ るるかに 時を従者に 空を乗せ 弦より滴 したた り零 こぼ る 夜の欠片 かけら は 二十重 はたえ 程の色を聞き 弧に弾かれて閃 せん として 何方 いずち 知らず燃えて立ち 風に戯 そば え方外 ほうがい へ 半分の月空を乗せ 天頂差して緩るるかに 今雲を割り また雲を割る 雲に座する半分の月 彼 か の頂を越え戸惑い迷う いつか時は逃げ 空は降りて 弦を喰らわんとする 数多 あまた の雲は 焼かれ焦がれつも止むことなく 弧は既に七色の叫び抛 なげう ち 明日を見るを諦め 深みへとただ沈み行く 半分の月雲に座る 彼の頂を越え溺れ行く 今雲は揺れ また雲は驟 うごつ く 率爾 そつじ 那辺 なへん より 夜鳴く鳥の声 寄りて遠退く 今空は黒を纏い 今地は黒に染まる 今雲は揺れ 今雲は驟き 今雲は絶え 今雲は生まれ 今雲は赤く 今雲は青く 今雲は白く 今雲は雲となり いずれ静かに揺う 予てよりの楽の音は 何方飲まれ 絶えて聞く者無く やがて雲はひとつになり やがて雲は幾千になり 低く高くその所を変え 白く黒く地を照らす いつしか 地の果てに 空の裾に うすらと滲む舟の影 今や見る者誰もなく もはや従う者もなく この時のただ去るが夢となる |