　『雨の香りに包まれて』　

　
雨に歩く
雨の香りに
包まれながら
行く先も決めず
思うが儘に
ただ歩く
　
雨に歩く
傘は
先ほどから
なにやら
囁き始めて
　
　
雨に歩く
耳元には
絶え間なく
歌い続ける
雨の声
　
雨に溺れ
雨を歩く
そんな今
いつしか
傘の囁きは
怒号へと
　
　
ふと
見付けた
幽かな明かりは
傘に開いた
小さな穴
　
　
雨を歩く
ただただ
雨を歩く
そんな今
　
　
そう
　
こんな
　
今
　
　
まだ
空は
傘の向こう
　
空は
まだ彼方
　
　
　
雨を歩く
　
　