　『うっすらと浮かぶ上弦の月』　

　
季節外れの
雲ひとつ無い
青く高い空に
　
陽光に
掻き消されそうになりながら
うっすらと浮かぶ
上弦の月
　
　
ふと思う
後を追う太陽が
その姿を
掻き消す方が早いか
　
消される前に
地平に
逃げ切る方が早いか
　
空を眺めながら
歩を進める
西へ西へと
　
　
やがて
月の姿が
かなり薄れてきた頃
　
曲がりくねりながらも
西を指していた道は
ビルの群れに阻まれて
月を置き去りにして
大きく南へ
　
　
季節外れの
雲ひとつ無い
青く高い空に
　
陽光に
掻き消されそうになりながら
うっすらと浮んだ
上弦の月
　
　
いつしか
太陽は昇り詰め
そんな月は
いつしか
ビルの向こうへ
　
　
季節外れの
雲ひとつ無い
青く高い空に
　
陽光に
掻き消されそうになりながら
うっすらと浮かんでいた
上弦の月
　
　
気付けば
天頂は見えるものの
周囲はビルに囲まれて
　
　
この様子だと
これ以上
追い続けても
同じ事を繰り返す羽目に
　
　
思えば
こちらでは
建物は
地平と化して
地平同然の存在
　
月は
無事に
逃げ切った事にして
今は帰る道を
探す事にしよう
　
　
　
季節外れの
雲ひとつ無い
青く高い空
　
　
今は
太陽だけが
　
ただ
静かに
笑っている
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
・・・後で
それも
かなりかなり
後での事
　
ふと
その光景を
思い返せば
　
上弦の月は
太陽を追いかけるのみ
太陽に追われる事は
無いはず
　
今の今なら
断言できる
あれは
紛う事無く下弦の月
　
　
でも
これで
二度楽しめたから
　
今の今は
自分も
大笑いの只中と
　
　