春にふと帰って来た冬
雪をその手土産に
賑わいかけた地面は
春の先触れを見捨て
天を睨みまた凍てつく
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雲達は
春めく空を覆い
いつの間にか
肩を寄せ合い一つになって
天を埋め尽くす
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住み慣れた場所が良いのか冬よ
呼び止められたか何者かに
逃げ場を失う前に去るが善と
とりあえず今は言っておこう
動き続ける時を止めるのは
儚い夢に過ぎぬと
とりあえず今は
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春にふと帰って来た冬
雪をその手土産に
逃げ場を失った世界は
春をただ夢見るばかりと
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遠い春はまだ夢の遙か彼方
ただその時を待ち
沈黒の時の流れの中
空となった瓶を掲げ透かし見る
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瑠璃色瓶の向こうに見える空は
図らずも春の空
乱反射する閉じ込められた春の光に
苦笑いしつつ
継ぎ足す水も既に無く
繰り返し浮かび沈むそのことは
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