『 ふと絶えたその春の雨音に 』
茫
ぼう
と踊れ時を憶えぬ春の雨
降る雨の
音のみの
また止まず
ふと春を知る
春の夜に舞う一握りほどの雨粒の崩れ解けるを
また
素知らぬ顔で知らぬ顔で
春に生きる冬のやけにのびのびと
夜にただ舞う雨粒に
誘われ踊る花の欠片の
春一握り
こんな寒い真春の日
こんな暑い真春の日
降る雨のその音のみがまだ止まず
降る雨のその音のみのまた止まず
風だけが知る
ただ今のみの
この空の軟らかさ
陽光の今ひとつほど足りなくて
夜に聞くかの春雨音すら懐かしく
夜を越え朝を乗り切り
ふと耳にする自分の声の
この毬
いが
に諭されて
ヤゴひとつ
揺られて眠る
蜘蛛の廃屋
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