『 春の凱歌
がいか 』
- 名の無い春の十の連作 -
北を指す
この風達は
ただ躓
つまづ き
北を指す
この風達は
いつも躓き
知れずに
またも南を指して
ただ
この風達は
いつも
知れずに
明日を指して |
風よ踊れ
早く
北を目指し
風よ舞え
速く
北めがけ
風よ歌え
早く北へ
速く北へ
その声を |
一夜
ひとよ の桜の花びらの
月下に集い舞い踊る
一夜の桜
月に舞う
一夜の桜
風に揺れ
一夜の桜
雨に揺れ
一夜の桜の花びらの
下に集う名残の空き缶
ただ風に揺れ |
そうだ
あの花びらのように
光を捕らえ
飛んでみようか
風の背に乗り
街を縫い
風を乗り換え
時を縫い
春を高く
春を遠く
今の空へと |
風よ風
もし叶うなら
その
鼻先の
花びらの
ひとつほど
あの青空に沈む
糸の月まで
届けておくれ
そうあの雲の先の
糸月まで
ほんのひとつの言葉を載せて |
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