「薄氷」
漂い蕩 とろ け
また流されて
丸くなり候 そろ
春間近
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「春一番」
また忘れずに
この風は来て
また去る先も
同じ場所
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「寒桜」
なにを今にと
咲くというのか
季節の別れ
目の前に
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「なごり」
菜種梅雨さえ
戸惑い雪に
触れる御身の
冷たきに
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「イヌフグリ」
偽の涙と
気付かれようが
地に舞い降りて
青と咲く
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「春分」
分かれの春の
その片割れは
どこに花咲く
朧月
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「春雷」
春に響いて
雷ひとつ
落ち行く先も
靄 もや の内
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「北帰行」
夜を仰ぎ見て
泣いて旅立つ
雁の一声
息白く
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「サンシュユ」
枯れ枝に花
弾け開けど
待つ青い空
雲の上
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「燕」
春に恋われて
舞を尽くせど
燕の戻る
家失せて
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