ウォーレスの海の家

− 400年に一度の・・・・・・ −


 

「よりによって、なんでこんな日に」
「こんな日にとは、なんじゃ」
「400年に一度の特異日にだよ」
「わしには、いつもと同じ日にに見えるがの」
「確か、この間は1000年に一度だの、
2000年に一度だのと騒いでいなかったっけ」
「今回は特別なんだって」
「何がどう違うのか、説明してほしいもんじゃな」
「だから、前回までのは当たり前に過ごしていれば、
やがて迎える経過点なんだとさ」
「じゃあ今回は何じゃと」
「今回は、どこぞの誰ぞが、寝過ごして慌てて飛び起きて、
勢い余って・・・・・・、みたいなもんさ」
「ちょうど、今のわしみたいなもんじゃな」
 
「どこがだね」
「昨晩というか、今朝というか寝ていたら。耳元で囁く声がしたんじゃ」
「あんたが、昨晩や、今朝に寝ていたら、是非とも教えて欲しいもんだね」
「なんじゃと」
「あんたが、昨晩や、今朝に寝ているとこなんか、見たこと無いよ。
あんたが寝るのは それ以外の時間だろ」
「わしが寝ればそれは夜。起きればそれは朝と」
「それなら、暦に文句を言うのはお門違いじゃないかい」
「その点に関しては、折り合いが着いてるんじゃよ」
 
 
「それで、なんて囁かれたんだい」
「汝の声、誰も聞かずば一人歩め、とさ」
「それで、ほっつき歩いて、迷子になってここに来たのか」
「世間じゃこれを、帰巣本能と・・・・・・」
「寝際に、変な物でも食べたんじゃないのかい」
「おお、そういえば」
「もし、思い当たるのなら、自分の胸の内にだけにしといてくれ」
「なんじゃと」
「お願いだから、公言しないでくれよ」
「何を言うんじゃ、寝しなにわしは何も食っておらんぞ」
「本当かぃ」
「わしは、ただ、新装開店の遮莫とやらのフレーム版とやらを見ただけじゃぞ」
 
「なんで、テキスト版にしなかったんだ。そうすりゃ、すっきり目覚めたのに。
何と言ってもテキスト版は、フレーム版やオリジナル版と違って、軽いし、速いし。
オマケに、身体にも良さそうな気がするけどね」
「だから止めたんじゃ。ふん、身体に良いじゃと。
身体に良いもんは、心に悪いってのが、相場さね。
どこぞの、酒場のカウンターにも、そう書いてなかったっけかな 」
「少なくとも、家の店には書いてないよ」
「だいたい、水飲んで心が満たされるかってんだ」
 
「おい、おい、出てく前に、金をおいてけよ」
「なんじゃと、人を無銭飲食呼ばわりして」
「だって、そうじゃないか」
「わしゃ、瞬く間に戻ってくるぞ。無銭飲食たぁ、戻って来ない奴の事を言うんじゃ」
「そりゃ、どうも。で、どこに行くんだぃ」
「どこに行くじゃと、決まっとろうが、おまえさん所の酒場のカウンターに、
ちょいと、 書き込みに ・・・・・・」
「なぁ、400年に一度のこの日だ。あんたに、400年に一度の、
豪華プレゼント付きのおめでたい提案をしようじゃないか」
「何じゃね、それは」
「もし、カウンターに行くのを思いとどまってくれたら、
今日はオゴリにしようじゃないか」
「わしが、脅迫に屈するとでも思っているんかいの」
「脅迫じゃないよ。提案だよ、豪華プレゼント付きの」
 
「400年に一度か」
「特異日だよ」
「400年後の今日、なにしてるんだろうな、わしは」
「きっと、今日と同じこと繰り返してるんだろうな」
「違いあるまい。そういえば、またボトルの底が抜けちまったようじゃな」
 

 

29,Feb,2000



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