「ふぅ、やっと落ち着いたようじゃの」 「落ち着いたって何が」 「あっちこっちに感謝しまくってたんじゃ」 「あんたでも感謝することがあるんかい」 「何を言とる、わしの心はいつも感謝で満ちあふれておるぞ」 「なら、真っ先にココに来るのが・・・ いや、ココに来ないのがなによりもの感謝だとは思わんかね」 「ははっ、さてはおまえさん照れておるな」 「何をバカな」 「感謝祭といえば、七面鳥じゃな」 「一日遅れじゃね」 「なら、昨日なら有ったとでも言うんかい」 「なぁ、じいさんや。一つすばらしい提案があるんだがね」 「なんじゃ、言うてみい」 「七面鳥料理はもうないが」 「もうじゃと、ってことはなにか、わしの分は、唯一の常連であるこのわしの」 「だから最後まで聞けよ」 「冷たいヤツじゃのう」 「だから代わりに、野生のヤツを」 「なんじゃと、生で喰えとでも」 「こっちのほうだよ」 「なんじゃ、ワイルドなターキーさんか、早くそれを言わんかぃ」 「そのかわりだ、もう七面鳥の話はよしとくれよ」 「おいおい、いつからおまえさんは客である、このわしに指図できるようになったんじゃ」 「あんたねぇ、ツケを払うまではあんたは客じゃなく単なる負債者だよ」 「なんじゃ、ココは単身で来ても、いもしないカミさんのぶんまでふんだくるのか」 「だから・・・。もういいよ。何かこっちまで混乱してきそうだ」 「そういや、あんた最近ココで、何か始めたらしいな」 「ココでか?ああ、百科事典のことか」 「またエライ事ひきうけたな。さばれさんは早くも懐古モードに突入か」 「いやな、若き日の残像を探し求めても、残尿感しか見つからんぞとは、言ったんだがの」 「まぁ、昔を振り返る余裕はあるわけだな」 「そりゃ、今しか見れぬわしに対する・・・」 「じいさんの場合は、見れぬじゃなくって、見ないんだろ」 「わしの場合は、どっちを見ても同じことじゃからの」 「今を見たって同じことだと思うがね」 「おまえさんにゃぁ、わかるまいて」 「来し方行く末と、あり方を忘れた御仁をどうすれば・・・」 「絶滅危惧種に指定されれば、保護金がおりるかも知れんしの・・・」 「産業廃棄物の間違いだろ」 「おりてしまえば、おなじことじゃろ」 「産業廃棄物はおりるんじゃなくて取られるんだよ」 「なら、本来の文化財って事でどうじゃ・・・」 「本来ねぇ。普通なら、見なかったことにして埋め戻されるはずなんだがね」 「おいおい、おまえさん一体誰のことを言っておるんじゃ」 「誰の事かって・・・、そりゃ、あんたねぇ」 「おおっ、誰と言えば、さばれどんじゃ。世紀末じゃしな。総括しときたいんじゃないのか」 「まったく、話は今どこに飛んでるんだ。その前にこの一年精算を・・・」 「生産じゃと、ふんっ、素人がっ。こういうときは創造と言うんじゃ。 まっ、ボチボチやるさ。完成したら良い事あるらしいしな」 「だれが、そんな事言ったんだ」 「だれがって、さばれどんがじゃよ。 遮莫一番の叡智の持ち主に話を持ちかけてくるなんて、 どこぞのごさどんと違って、なかなか見所有るじゃないか」 「じいさんは、完成すると思ってるんかい」 「じきに完成するさ、「あ」 と「い」 は終わったし、この間ココもやっつけたばっかりじゃ。次はあんたの酒場だぞ。 わしをぞんざいに扱わん方が良いんじゃないかのぅ」 「ほんとに、ココは終わったと思ってるのかい」 「なんじゃと、どういう事じゃ」 「例えば、今じいさんは何処にいる」 「どこって、あんた、自分の店を忘れちまったんかい」 「どうやらまだ気が付いてないようだな」 「うぅ、なんじゃと、何を言いたいんじゃ」 「いいかい、じいさんがココに顔を出すって事は・・・」 「酒が飲めるって事か」 「いいから聞けよ。海の家に新たな項目が増えるって事だよ」 「そりゃ、ココが更新されなけりゃ、わしの含蓄に富んだ言葉が・・・」 「百科事典を補完しなければってことさ」 「うっ、なんじゃと」 「ココだけじゃないぞ、仮に百科が完成しても、 どこかが動けば、 たちまち未完成に後戻りさ」 「むむむむむ。とんだ陥穽があったもんじゃな」 「シャレてる場合じゃ無いと思うがね」 「こうなら、やけ酒かぁ」 「ほら、ボトル毎持ってけよ」 「どうした、今日はヤケに気前が良いじゃないか、なにかあったのか」 「今日の分に限っては、さばれさんがもつそうだ。遠慮なくやってくれってさ」 「それだけわしゃ期待されておるって事かいの」 「せめてもの罪滅ぼしって事だと思うね」 「それはそうと困ったことになったの」 「今更気が付いても手遅れさ」 「いや、そうじゃなくてな」 「じゃあ、なんに困ってるんだ」 「こうすんなり次から次へと酒が出てくるんじゃ」 「うれしすぎて、困ってるのかい」 「んにゃ、いつものオチが使えんぞと思ってね」 「さもあらばあれってことさ」 「そういうことかいの」 「そういうことさ」 「仕方ないな、まっ感謝だけはしておくかの」 「態度で示せとさ」 「だれが、んなこと言ったんじゃ」 「さあね」 「大方おまえさんじゃろうて。それにしてもなぁ・・・」 24,Nov,2000
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