ウォーレスの海の家

− 海の家 改め じいさんの酒蔵? −



「二周年か、早いもんなのか、遅いもんなのかよくわからんがの」
「どっちでもありで、どっちでもなしって、言ったところかな」
「いつもの事ながら、この暑い盛りにドタバタするのは結構キツいもんじゃぞ」
「今回は珍しく役に立ったらしいじゃないか」
「今回は?珍しく?わしを怒らせたいのか?まぁ、今日はめでたい日じゃで、
 わしとしても、あまりコトを荒げて水を差したくないからの、
 ビールの10リットルほどで買収されてやってもいいが・・・」
 
「まぁ、ナントカ落ち着いたようじゃの」
「アタアタフタフタも含めて恒例行事だからしかたないよ」
「何かをするんなら、もう少し早くから準備をせんとな」
「忘れているんだとさ、思い出した時には、もうすでに・・・。だってさ」
「別に記念行事なんて、せんでも良いと思うがの」
「そうだな、そうすりゃ、こっちとしてもタダ酒振る舞わんでも済むことだしな」
「おおっ、やっぱり、記念すべき日は盛大に祝うのが本来のあり方じゃて」
「おい、おい。一体どっちなんだ」
 
「で、何をしたんだい」
「ふぉっ、ふぉっ、よくぞ聞いてくれた。ここの二周年記念の作品をな」
「えっ、じいさんが作ったのか」
「自分で言うのもなんじゃが、ほかの記念作品より遙かに良い出来じゃぞ」
「おい、おい。ホントに大丈夫なのか。
 読んだ人達が列なして抗議に来ても、知らないぞ」
「まさか、遮莫に来るお客はそこまでバカではあるまいて」
「なんか、厭な予感がするぞ、こりゃ、早めに店閉めた方が・・・」
「おい、おい。わしの作品を見もせんと、勝手なコト言ってからに」
「それもそうだな、どれ、チョット見てくるか。で、ドコにあるんだっけ」
「二寸庵じゃ。『 すべてにおいて すべてにおいて すべてにおいて 』ってヤツじゃ」
「なんか、長くてクドいタイトルだな」
「なに、その分中身は短くスッキリしたもんじゃ」
「ホントかね。まあいい、見ればわかるよ」
「おいおい、わしをこのままにしていく気か」
「ひょっとしたら、この店の存亡に関わるかも知れないんだ、
 悪いが、一人で勝手にやっててくれ」
「なるほど、そう言うことか。良しわかった。
 他ならぬ大親友の頼み無碍に断るわけにも行くまいて。
 ここはわしにまかせて、行くがよい」
 
「おおっ、帰ってきたか。どうじゃった。わしの大傑作は?
 んっ、なんか顔色が悪いぞ大丈夫か。道中何かあったかの」
「たった今、この瞬間から、ココは夏休みだ。
 すぐにでもシャッター降ろさないと。ヤバいぞ」
「おいおい、わしゃまだ・・・」
「他で飲んでくれ、酒は瓶ごと、いやケースごと持って行ってかまわないから」
「ココは年中無休じゃなかったのか」
「非常時は別だよ」
「だから何があったんじゃ」
「あんたのを読んだんだよ」
「それで?」
「みんなプラカードもって押し寄せて来るぞ」
「おいおい、プラチナカード持って来るんなら。大もうけのチャンスじゃろうが」
「冗談言ってる場合か、ゴミ捨ててくるから。戸締まりを頼むよ」
「それにしても、とことん商売気のないヤツじゃのう」
 
 
「ワザワザ見送りに来なくても」
「世話になってる、礼じゃよ。気にするんじゃないぞ」
「悪いことは言わない、あんたもすぐに夏休みとったらどうだ」
「なに、気にすんな。わしは毎日が夏休みみたいなもんじゃて」
「今からでも遅くない。もう少しすれば反対行きの列車が出るはずだ」
「ほれほれ、首引っ込めんと、ドアに挟まれてしまうぞ」
 
「何か言い残すことは?」
「誰かに聞かれても、行く先は教えないでくれ」
「どこへ行くんじゃ?」
「あんたのいないトコならどこでも行くさ」
「で、いつまで休むんじゃ?」
「ほとぼりが冷めるまでだ」
「なんと、ホットボリーが冷えるまでじゃと、
 うむ、聞いたことのないカクテルじゃのぅ。まあ、良いわ。
 あんたが休暇から戻ったら、冷えたホットボリーとやらを御馳走になるぞ。
 ここんとこ、確かにあんたは働きづめじゃで、休みも必要じゃろうて。
 店はワシに任せて、ゆっくりと休むがよい」
「店はって・・・」
「さっき、鍵をわしに預けたろうが」
「えっ、店の鍵だって。ああっ〜・・・」
 
「ええ〜っ、よ〜く聞こえんぞぉ〜。なんじゃとぉ〜」
「だ〜か〜ら〜。店の〜」
「おお〜っ、店のことは〜。心配するな〜。達者でな〜」
 
「それにしても、慌ただしいヤツじゃ。
 なんか、叫んだからか喉がカラカラ、ガラガラじゃ、
 どれ、ここは早速、店に戻って・・・ ・・・。
 ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。
 ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ・・・ ・・・」


9,Aug,2001


 

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