ウォーレスの海の家

− 主帰る!? −



「おおっ、お客さんかいの?これはまた珍しいことがあるもんじゃ」
「こんな辺境の地まで、よう来なさった」
「客が来るなんて、わしがこうして店を持ってから、初めての出来事じゃて」
「ご覧の通りのシケた店じゃ。遠慮なぞいらんぞ」
「よし、今日はワシのオゴリじゃ。一緒に飲むとするか」
「ただしじゃ、オゴリゆえ。サービスはせんからな。勝手に手酌でやっとくれ」
 
「んっ、どうしたんじゃ、そんな呆けた顔して・・・」
「さっ、そんな所に突っ立っておらんと、とっとと入って始めんと、
おまえさんの分まで、わしが飲んでしまうぞ」
 
「じいさん」
「おっ、いきなりじいさんと来たか。見かけによらず、フランクなヤツじゃの」
「何言ってるんだ。フランクじゃないよ。オレだよ、オレ」
「ああっ、オレじゃと。オレさんと言うのか、ふむ、なんかコンチネンタルななまえじゃの」
「だから、頼むよ。いきなりこれはないだろ」
「おおっ、失礼オレさんじゃなくて、コレさんじゃったか・・・
まっ、いずれにせよじゃ、先も言ったとおり、今日はセルフサービスデーじゃて。
望みがあるなら、わしに頼まずに、自分でやるがいいぞ」
 
「だから、違うんだってば。オレだよオレ。ウォーレスだよ」
「なんと、ウォーレスさんかいな、それならそうと早く言えばいいのに。
わしはの、なぜか知らんがの昔からからウォーレスと言う名前には、親しみを覚えてな」
 
 
「なんじゃ、まだ怒っておるんかいの。軽い冗談じゃて」
「どうみても、本気で言ってるようにしか聞こえなかったぞ」
「だいたいじゃ、四ヶ月も留守にしおってからに。忘れ去られるのは当然じゃて」
「すきで帰ってこなかったワケじゃないんだよ」
「下界で、なにかあったのじゃな」
「いや、何も無かったよ。実は九月の初めに戻ってきたんだよ」
「ならなぜ、今になるまで・・・」
「じいさん知ってたか。
ココ『 遮莫 〜 さばれ 〜 』の入り口の様子がすっかり変わってるんだぞ」
「そういえば、あん時は結構大騒ぎしてたっけ。
たしか、トップページが縦に伸びすぎたんで、縮めようと・・・
確かに短くはなったんじゃがの。代わりにゲキオモじゃ
まぁ、コッチまでは影響なかったがの」
「おかげで、すっかり迷子さ」
「なんと、まぁ」
「まったく、なんとまあさ。やっとの思いでフリダシに戻って・・・。
まっ、滅多に遠出しないんで。ついでにジャングル覗いておこうと思ってな」
「まぁ、ジャングルのトップは変わっておらんからの、ホッとしたじゃろうて」
「確かに、ホッと一息付けたけどな」
「んっ、まてよ、確かコトのついでにとジャングルの方も、いじったんじゃなかったかの」
「そうなんだよ外は同じだったけど、中はがらっと・・・」
 
 
「だから、一時は助かりそうな気もしたんだよ・・・
・・・偶然、ココの掲示板見つけて・・・」
「そいつぁ、まさに地獄に仏じゃの、んっ、地獄で仏じゃったかの」
「・・・知ってるだろ、ココの板」
「・・・おお、そうじゃった。おまえさんより遙か昔に流浪の旅に出たきりじゃったっけ・・・」
「相変わらず、凍りついていたけど。かろうじてまだ、ながらえていたよ」
「ふむ。それで欠いて持ってきたんじゃろうな」
「なにを、無茶な・・・」
「ウワサによると、あそこの氷を入れた飲み物はとてつもなく・・・」
「おい、おい。滅多なことを言うと・・・」
 
 
「やっとの思いで、ココを見つけたとき、ココに辿り着いた時に・・・」
「そりゃ感謝せんとな、ココさんとやらに。で、彼女はどこにおるんじゃ?」
「ここは、再セットアップ熱に憑かれていて・・・」
「なんと、ココさんは熱病に冒されていたじゃと」
「おかげで、さっきまで待ちぼうけをくらってたんだよ」
「なんじゃと、マッチ棒を喰らうはめにまで。今時マッチ棒はなかなか手に入らんぞ・・・」
「悲恋じゃったのぉ」
「ああ、こんな悲惨な思いは・・・」
「やがて、それも時が解決するじゃろうて。どうじゃ。それまで旅に出るというのは・・・」
「ははは、こんな不毛な会話さえ愛おしく感じるよ」
 
 
「ところで、鍵は?」
「おお鍵か。心配するな、留守中におまえさんの大切なもの失したとあっては、
ワシの信用問題に関わるんでの」
「いや、実を言うとそれが一番の気掛かりだったんだよ」
「心配するな、失しても困らんようにちゃんと手は打ってあるぞ」
「それで、どこに」
「気が付かなかったんかいの。まぁ、表を見るがいい」
「表? なんかキラキラしてたな。そう言えば、さっきも気にはなったんだが」
「おお、気が付いておったか。
実はな、千個ばかりコピーを作ってあちこちに置いてたんじゃ。
まぁ、そんなことはないとは思うがの、もしも鍵を失した時のためにな」
「まっ、まさか・・」
「名案じゃと思うわんか。もし鍵を忘れても、そこらから拾えば」
「・・・」
「これで、自分の店からロックアウトされることは・・・」
「・・・ ・・・」
「なんじゃ帰ってきた途端、また出かけるのか・・・」
 
「はてさて、なんとも忙しいヤツじゃのう。
まぁ、今回は鍵が山程あるから良しか・・・ ・・・のぉ」


30,Nov,2001


 

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