彼方へ、そして・・・ 
断続寓(愚)話 『 彼方へ、そして・・・ 』 その八


 

   その八  こりゃいいぞ
 
 
 辺りを見回す、詮方ちゃん。
 思うはいつも、同じこと。
 上から見たら美しかろう。
 横から見たら楽しかろう。
 ため息混じりの、詮方ちゃん。
 
 ちょうどその時、彼方から。
 流れてきたよ、とにかくが。
 かなり小さな、とにかくが。
 いつかの誰かの、つぶやき持って。
 やはり、ぼんやり輝きながら。
 
 
 それ見た詮ちゃん、ひらめいた。
 こりゃいい、こりゃいい、こりゃいいぞ。
 詮ちゃん、その手をすと伸ばし。
 流れるとにかく、捕まえた。
 自分の隣に、そっと置く。
 
 とにかくお願い、とにかくよ。
 詮方、願いはただ一つ。
 おまえの役目は、ただ一つ。
 そうなんだに、そりゃなんだ。
 声なき声を、聞いとくれ。
 つぶやき持たぬ、彼等の声を。
 
 哀れなのは、その手のつぶやき。
 とにかく、急に無くなって。
 たった一人で飛んでった。
 つぶやく言葉共々に。
 一体どこへ行くのやら。
 一体誰が聞くのやら。
 
 答えようにも、とにかくは。
 訴えようにも、とにかくは。
 つぶやき無くして、儘 まま ならぬ。
 とにかくは、どうしていいかわからずに。
 飛んでくつぶやき、眺めてる。
 何かを言おうとしたけれど。
 肝心の、つぶやきどこかへ行っちゃった。
 つぶやき無くした、とにかくは。
 言うに言えない、とにかくは。
 言うことが、どんどんたまり、とにかくは。
 
 どんどん、どんどん膨れてく。
 だんだん、だんだん輝きまして。
 隣で詮ちゃん、そっと言う。
 みんなの真ん中、こりゃいいぞ。
 みんなを照らして、こりゃいいぞ。
 こりゃいいぞ。今からおまえは、こりゃいいぞ。
 
 


 
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