『夜の女王、月の女神 』


忌々しい陽が私を畏れ逃げ去って行く
さぁ、早くお隠れ、そのふさわしい場所へ
これからは、私の時間、私の世界
 
 
すべてのものは、私の庇護下に
すべてのものは、私に抱かれ
すべてのものは、私に平伏す
 
 
おいで私の子供達
おいで私の胸に
その望むままに
 
 
さぁ、望むものは何
さぁ、何が欲しいの
さぁ、さぁ、さぁ
 
 
ほら、ごらん、おまえの望むもの
ほら、ごらん、おまえの夢
ほら、ごらん、すべてがここに
すべてがおまえの望むまま
すべてがおまえの夢のまま
 
 
ただひとつそのちっぽけなその心
ただひとつとるにたらない小さな命
ただひとつその魂を捧げれば
すべてがおまえの望むまま
すべてがおまえの夢のまま
ただひとつその魂を捧げれば
 
 


毎日毎日
同じことの繰り返し
よく飽きもせずに
ぐるぐるぐるぐる
同じ所を廻っている
 
 
昼も夜も
一日かけて
太陽に背を向け
太陽に正面を焼かれ
益体もない青の周りを
 
 
これはだれかの呪いなのか
それとも自分で望んだことか
いまとなっては同じこと
いずれにせよ逃れようがない
囚われの自由の身
それとも、自由な囚われの身
いずれにしても同じこと

 


声が聞こえる
あの声は
そう、哀れな四つ足
私を見つけるたびに
叫んでくる
 
 
なんと悲しい声だろう
なんと淋しい声だろう
その声は何を訴えている
喪失感それとも絶望
それとも、運命の受容か
去りし者への郷愁か
 
 
どこにいる
哀れな生き物
滅び行く定めの者
死すべき定めの者
命に限りのある者
 
 
痩せさらばえ
老いさらばえ
かつての群もなく
満足に動くもままならず
冷え切った身体をかかえ
それでもおまえは歌うのか
 
 
応える者などもういない
その叫びを聴く者も
それでもおまえは
それでも
 
おまえと私
どちらが孤独なのだろう
比べるべくもない
失いし者と失えぬ者
さらぼうえる者とさらぼうえぬ者
知り得ぬ者と知り得る者
 
 
むしろ孤独は私の友達
むしろ孤独は私のよすが
そして孤独は私の
私の

 


 
たまにはこんな夜も
受け入れられる
たまにはこんな夜も
いとおしい
 
今はおまえを見守ろう
ゆっくりお休み
明日なきものよ
肉の夢でも見るがいい
 
ゆっくり眠れ
過去なきものよ
 
ゆっくりお休み
今なきものよ
 
ゆっくりと


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