彼方へ、そして・・・ 
断続寓(愚)話 『 彼方へ、そして・・・ 』 その十一


 

   その十一 隻手 せきしゅ の声
 
 
 
 幽 かそ けき静寂 しじま の此方 こなた
 渺々 びょうびょう たる久遠 くおん の流れに、その身をゆだね、
たゆたい、たゆたう者ありき。
 その渺茫 びょうぼう たる彼方の、
縹渺 ひょうびょう たる細鳴 さなり に醒覚 せいかく してみれば。
 
  誰が我。
 
 そは空華 くうげ と見まがうばかりの、賑 にぎ わわしき。
 
  我は誰。
  我は我。
 
 されど、主 あるじ 跡を隠したるかのごとく・・・・・・。
 
  我とは何ぞ。
 
 何事ぞ、起こりけむと・・・・・・。
 
  我は答えを知っている。
 
 意識の触手を伸ばしけるに・・・・・・。
 
  我のみ問いに
 
 い次ぎ、い継ぐは虚無ぞのみ・・・・・・。
 
  いつもどこかはいい天気。
 
 いっかな、茫漠 ぼうばく たる虚空 こくう とて・・・・・・。
 
  あまりの遠きにつぶやきは。
 
 
 唯なり、阿なりの声も、聞こえもあらず・・・・・・。
 
  詮方ない
 
 これを定 じょう となすか。反定 はんじょう となすか。
 それともこれを総 そう となすべきか・・・・・・。
 
  汝ガ意志ノ
 
 其れと彼、再び旁魄 ほうはく してみんと・・・・・・。
 
 
 してみんと  其れと彼。
 それ彼、みんとに、旁魄だ。
 定立、反定何するものぞ。
 
 
 違う、違う、チ・ガ・ウ。
 おかしい、何かが、何もかも。
 でも、何が。
 否 いな 、何も。
 いや、違 ちが わぬ事が、違 たが わぬ事が。
 
 それでは一体何事が。
 それとも一体何事か。
 
 


 
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