その二十 夢魔 入れ子の夢は ダラダラと 果て無く続き 醒めることなく 入れ子の夢は 延々と いつまで経っても 夢の中 廻り疲れて 休もうも 次々現る未知の既知 休み疲れて 廻ろうも 次々現る既知の未知 抜けても抜けても 次々開く 新たな夢の直中 ただなか で 醒めても醒めても 醒めやらぬ 新たな夢の真中で 詮方尽きて 眠る者あり 詮方無くして 佇むものおり 夢幻泡影 むげんほうよう 無期 むご の夢魔 無言の夢魂 むこん を無理圧状 むりおうじょう むんずと掴む夢寐 むび の首 その時 彼の時 どの時か 空より 地より 何処より こん、こん。 とん、とん。 こんとんとん。 ぼんやり滲む 音ありて とことん、とことん、 とんとことん。 夢に染み込むその音は やがて滴る音となり こことん、こことん、 こことんとん。 幾重にも入れ子に重なる泡沫 ほうまつ を 針差す如く貫いて 泡沫崩壊方外 ほうがい に 針差す如く突き破る こんこんと 割れて破れて弾けとぶ 数多の夢の中心に とんとんと 紡がれ生まれ膨れ行く 数多の夢の中心に やがて浮かぶは影ひとつ 密かに沈む影ひとつ 漂い揺れて戸惑って 揺れて返され浮き沈み ゆうらりゆらり ゆらゆらり その身を揺らす楽の音は その身を叩く楽の音は その耳届く事は無く その目を開ける事も無く ゆうらりゆらり まだ夢を見る ゆうらりゆらり また夢を見る |